エックス線作業主任者は労働安全衛生法に基づく国家資格の1つで資格を取得すると、管理区域のエックス線作業主任者として職務を行えるようになりますが診療放射線技師と違って人体に照射してレントゲン撮影を行うことはできません。
ではどんな仕事で役に立つ資格なのでしょうか?
当記事ではエックス線作業主任者資格の需要や就職先での仕事内容、そして給料についてまとめていきます!
目次
主な仕事内容は非破壊検査
エックス線作業主任者の主な仕事内容は、エックス線発生装置を使用して機械や建物などの構造物を壊さずに強度試験を行う非破壊検査です。
エックス線を対象物へ照射して透過した割合から構造物の強度を判定できる放射線透過試験 (RT: Radiographic Testing)が有名ですね。

原理としてはレントゲン写真の撮影と同じで、まずは対象物の後面にフィルムを置いてX線を照射してX線写真を撮ります。
X線が吸収されずにフィルムに入射した部分は黒く写り、対象物内で吸収された部分は白色になります。

こちらは工業部品をエックス線撮影した写真で、赤丸で囲まれた部分に黒い縦線が入っていることが分かるでしょうか?
この写真から縦にヒビが入っていることが分かるという訳です。
空港の手荷物検査員としての仕事
エックス線作業主任者の資格を取ると空港の手荷物検査員(空港保安員)として働けるという情報をよく見かけますが、手荷物検査員は資格が無くても働くことができます。
空港で働けるので手荷物検査員になりたい人は多いようですが、お客様とトラブルになることも多く大変なお仕事で離職率は高いそうです。
法例で定められている職務
主な仕事内容としては非破壊検査ですがエックス線作業主任者の職務として電離放射線障害防止規則内で定められていることを分かりやすくまとめました。
- 管理区域や立入禁止区域の標識が規定に適合して設けられているかの確認
- エックス線発生装置の照射筒や絞りが適切に動作するかの確認
- 放射線従事者の受ける線量をできるだけ少なくなるように照射条件を調整すること
- 作業中に第三者が立ち入らないように最新の注意を払うこと
- 放射線発生装置が正しく動作するように始業点検、終業点検を行うこと
電離放射線障害防止規則の文面は以下の通り。
(エツクス線作業主任者の職務)
第四十七条 事業者は、エツクス線作業主任者に次の事項を行わせなければならない。
一 第三条第一項又は第十八条第四項の標識がこれらの規定に適合して設けられるように措置すること。
二 第十条第一項の照射筒若しくはしぼり又は第十一条のろ過板が適切に使用されるように措置すること。
三 第十二条各号若しくは第十三条各号に掲げる措置又は>第十八条の二に規定する措置を講ずること。
四 前二号に掲げるもののほか、放射線業務従事者の受ける線量ができるだけ少なくなるように照射条件等を調整すること。
五 第十七条第一項の措置がその規定に適合して講じられているかどうかについて点検すること。
六 照射開始前及び照射中、第十八条第一項の場所に労働者が立ち入つていないことを確認すること。
七 第八条第三項の放射線測定器が同項の規定に適合して装着されているかどうかについて点検すること。
出典:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-32-6-0.htm
需要は多くない
エックス線発生装置は人体では無く機械などの非人体に照射するのであれば資格を持っていなくても扱うことができるので、非破壊検査をするのに資格は必要ありません。
その他の例を挙げると診療放射線技師を目指す学生は当然のことながら放射線技師資格やエックス線作業主任者資格を持っていませんが、毎週のようにX線発生装置を使って研究や実験をしています。
エックス線作業主任者の資格を取る意味としては、エックス線を扱う管理区域の作業主任者(責任者)に任命される資格を得るためということが大きいです。
ただ管理区域の作業主任者というポジション自体が少ないため需要も決して多くありませんし、作業主任者をわざわざ採用するのではなくて既に会社で働いている社員に資格取得を命じるパターンがほとんど!
求人はほとんど無い
エックス線作業主任者と資格名でハローワークの求人を全国47都道府県を対象に調べてみましたが出てきた求人数はわずか30件程度です。
1つの地域で1つ求人があるかないかのレベルなので、エックス線作業主任者の資格を取得したからといって就職先がすぐに見つかるわけではありませんね(´;ω;`)ウッ…
ただ「非破壊」で検索すると700件程度の求人は見つかるので仕事を探すときは、エックス線作業主任者では無く非破壊検査に携わる企業を探すようにしましょう!
年収は400万~500万程度
エックス線作業主任者(非破壊検査技術者)の平均年収は成人男性の平均的な年収とほぼ同じ400万円~500万円です。
非破壊検査に従事する人がエックス線作業主任者の資格を取ることで毎月、数千円~数万円の資格手当がもらえるようになります。
会社から管理区域の責任者として任命されるために必須の資格ですし、昇進や昇給の条件にもなるので非破壊検査に関連する会社で働きたい人はぜひ勉強して資格取得を目指してください!
試験科目と概要
エックス線作業主任者の試験科目や問題数、概要についてまとめました。
試験は4科目で全40問。
100点満点の試験で60点以上を取れば合格ですが、各科目ごとの得点が40%以上ないと不合格になります。
1科目でも低い点数を取ってしまうと不合格なので、4つ全ての科目を満遍なく勉強する必要があります。
- エックス線の管理に関する知識10問(30点)
- 関係法令10問(20点)
- エックス線の測定に関する知識10問(25点)
- エックス線の生体に与える影響に関する知識10問(25点)
試験は午前と午後の2時間ずつに分かれており午前はエックス線管理と法例、午後はエックス線測定と生体に与える影響が出題されます。
試験時間は午前10:00~12:00、午後13:30~15:30ですが年度や各地域によって違うので、試験を主催している公益財団法人安全衛生技術試験協会の公式ホームページをチェックして下さい。
免許を受ける資格を有する者
エックス線作業主任者は他の国家資格を持っていれば都道府県労働局長へ申請するだけで免許をもらうことができます!
その国家資格は以下の3つ。
- 診療放射線技師免許を受けた者
- 原子炉主任技術者免状の交付を受けた者
- 第一種放射線取扱主任者免状の交付を受けた者
まあ技師免許や原子炉主任技術者に合格した人がエックス線作業主任者の免許をわざわざ申請する意味はほぼありませんが(´;ω;`)ウッ…
参考までに診療放射線技師がエックス線作業主任者の免許申請を行う方法について別記事にまとめたので、技師のかたはチェックしてください。
まとめ
エックス線作業主任者は合格したからといって即、就職に繋がるかといったらそうではありません。
非破壊検査の会社で働いている社員が資格手当や責任者に任命されるための目的で取得するケースが多いです。
放射線関連資格であれば、さきほども紹介した放射線技師、原子炉主任技術者、第一種放射線取扱主任者が仕事にも直結しておすすめ!
ただ難易度は全く別物ですし共通点は放射線に関連するということぐらいですけどね。
4科目で計40問と難易度は低いので資格マニア、非破壊検査の仕事に就きたい人、もしくは既に非破壊検査に従事している人は出世のためにも早めに資格を取るのが良いでしょう。
それ以外の人がエックス線作業主任者を取るメリットはあまり無いのかなとい思います。