CT検査と一括りにいっても頭部、胸部、上腹部(肝臓から腎臓)、骨盤部などの撮影部位によって目的や見つかる病気、そして被曝量などは全くの別物になります。
今回は主に肺を目的とする胸部CTにスポットを当てて検査についてまとめていきます。 CTの全般的な概要についてはコチラの前記事をご覧ください。
目次
胸部CT検査
胸部CTで分かること
分かること、目的をまとめていきます。
- 胸部レントゲン写真で見つかった異常影の精密検査
- 胸の痛み、咳、発熱などの症状の原因を調べる
- 縦隔拡大、腫瘍などの精査
- 心臓、肺、肋骨、冠動脈等のスクリーニング
- 胸部領域の放射線治療計画
- 低線量による肺がん検診目的
CTはレントゲン写真では描出することが難しい影(結節影)をも画像化することができ、診断能が非常に高いので可能な限り被曝量を抑えた胸部CT検診が増えています。
分かる疾患・病気
- 肺炎
- 結核
- 肺癌
- 肺気腫
- 無気肺
- 胸水貯留
- 胸膜肥厚
などなど。 最近では高性能CT(320列CTやデュアルソースCT)と造影剤を使ったCAG(冠動脈造影)検査も多数行われるようになってきています。
メリット・デメリット
メリット
- 特別な前処置が必要なく、CT装置があればすぐに検査ができる
- 胸部レントゲンでは見つけることができない、小さな異常影を描出できる
- 肺野だけではなく縦隔領域、骨領域の精査も可能
- ヘリカルスキャンでは画像再構成により3D画像の作成も可能となる
デメリット
- レントゲンに比べて数倍~数十倍の被曝量
- 息止め不良、体動がある患者に対しては検査の精度が落ちる
前処置・服装
基本的には造影剤を使う場合であっても特別な前処置は必要なく、いつも通りに朝起きてご飯を食べて大丈夫です。
服装については胸部レントゲン撮影ほど、厳しくはなくて上着を脱いで肌着+TシャツでもOK!
という所も多いですが、アクセサリー類、ブラジャーなどは外しておくのがベストです。
ただ検査着も用意されているので、必要以上に考える必要はありません。
検査手順と検査時間
簡単な胸部CTの検査の流れです。
- 名前を呼ばれてCT室に入室する
- 服装の確認をされて、必要な場合は検査着に着替える
- CTのベッドに仰向けで寝て、腕を挙げ両手を頭の上で組む
- ベッドがCTのガントリー(筒の部分)内へ吸い込まれていく
- 1度目の撮影(撮影範囲を決めるため)が始まる
- 2度目の撮影(こちらが本番の撮影)が始まる
- 痛みも無く終了。ベッドが下がりきってから降りましょう!
CTもレントゲンと同じく撮影前に「息を吸ってー止めて下さい!」という合図があるのでしっかりと息止めをしましょう。
息止めを適当にすると、呼吸の影響で画像がボヤやけてしまい、せっかくの検査の意味がなくなってしまいます。無駄に被曝するだけですよ!
検査時間としては名前を呼ばれて、撮影終わって退室するまでで約5分ほどで終わってしまいます。
最近の装置だと撮影時間は数秒~長くても10秒かからないぐらいです。
造影剤を使う検査だと準備、撮影回数が増えるので、もう少しかかりますけどね。
CT検査だと両腕を上げる必要は無いように思う人もいると思いますが、理由としては腕への無駄な被曝を避けるためです。
腕を上げないと被曝してしまいますのでね。。。
またアーチファクトという、画像に異常影が写ってしまう原因ともなります。
胸部CTの被曝量
部位・組織 | 被曝線量[mGy] |
入射皮膚面 | 15~20 |
甲状腺 | 10~30 |
食道 | 20~40 |
肺野 | 20~40 |
乳房 | 20~40 |
胃 | 10~30 |
肝臓 | 10~25 |
結腸 | 0~10 |
骨髄 | 5~15 |
生殖腺(男性) | 0.01 |
生殖腺(女性) | 0.1 |
胸部CTは肺の上縁~下縁までを、撮影範囲に含めるため、被曝する部位・組織も多くなりますが、いずれの場合も問題になる線量ではありません。
生殖腺への被曝は男女ともに「0」と考えてもいいでしょう。
妊娠していたことを知らずに検査を
受けてしまった場合でも、放射線被曝が原因で流産・障害が発生することはありません。
ただ妊娠が分かっている場合には、必ずドクターに申告のうえ相談をしてください。
※放射線被曝の影響と被曝線量
組織・臓器・部位 | 影響・障害 | 被曝線量[mGy] |
胎児 | 流産 (受精後~8日の着床前期) |
100 |
形態異常・奇形の発生 (着床~8週) |
100 | |
精神発達の遅れ (8週~25週) |
120 | |
成長の遅れ (全期間中) |
120 | |
生殖腺(男性) | 一時的な不妊 | 150 |
永久不妊 | 3500 | |
生殖腺(女性) | 一時的な不妊 | 650 |
永久不妊 | 2500 | |
眼 | 水晶体の混濁 | 500 |
白内障 | 2000 | |
骨髄 | 造血能の低下 | 500 |
皮膚 | 皮膚紅斑・脱毛 | 3000 |
胸部CTで肺癌を見つけよう!
肺の病気といえば誰しもが頭に思い浮かべる肺癌。
男性では癌での死亡原因トップは肺癌で、女性でも大腸がんに次いで2番目に多くなっています。 怖い肺癌を見つけるには胸部CTが最も優れています。
定期検診での胸部レントゲンで見つかったときには、すでに進行していて治療が間に合わないことも。。。
癌の発生が増え始める50歳代になったら、一度胸部CTでの検査を受診することをオススメします。
癌は早期発見、早期治療が大切です。
もちろん無いことが理想的なのですが、万が一という可能性があるかもしれません。あなたとご家族のためにも健康管理はしっかりと行いましょう!