胸部と一緒に撮影の依頼がされることも多い腹部レントゲンについてまとめていきます。
腹部と言えばCTのイメージも強いと思いますが、被曝量も格段に少なく検査自体もすぐに行うことができるので、腹部検査の第一選択肢として超音波とともにメジャーな検査と言えるでしょう。
腹部レントゲン撮影とは
撮影範囲
身体の部位で言うと、横隔膜から恥骨の範囲を写します。

画像出典:ekopujisetiyantoscience.blogspot.jp
横隔膜より下に位置する胃・肝臓・脾臓・膵臓・腎臓・胆嚢や小腸・十二指腸・結腸、骨で言えば下部肋骨、胸腰椎、骨盤などが撮影範囲に含まれることになります。
目的・分かる病気
腹部単純撮影の目的・分かる病気、疾患です。
- 腹痛・腹部膨満感、吐き気や嘔吐の原因究明
- 泌尿器系、胆道系などの結石を疑うとき
- 腸管内のガス像の有無
- 腸管外のガス像(腹腔内の遊離空気、フリーエアー)の有無
- 腹水などの腹腔内英期待貯留の有無
- 下部胸椎~腰椎、下部肋骨、骨盤など骨の確認
- 血管壁の石灰化
メリット・デメリット
メリット
- 痛みが無く、前処置も必要ない、非侵襲的な検査
- レントゲンの設備があれば、簡単に検査が実施できる
- 腹部臓器、腸管の情報を得ることができる
デメリット
- 非常に少ない量ではあるが、放射線被曝をする
- 腹部CTほど詳細な情報は得られない
前処置・服装
腹部撮影では絶食などの前処置は必要ありません。基本的には普通に食事をして大丈夫です。
撮影時の服装ですが女性だと検査着に着替えることを求められることが多いです。その理由とは?
- お腹の撮影とは言っても、ブラジャーはワイヤー部分が写るので外さなければいけない
- 骨盤部(恥骨)まで写すので、ズボン・スカートも膝上ぐらいまでは下ろさなければいけない
- 下着もウエスト部分のゴムのラインがしっかりと写ってしまうので、下ろさなければいけない
下着ぐらい履いたままでいいじゃん!と思われそうですが、意外とはっきり写ってしまうので。。。医師・技師からも服装の説明があるので、面倒でしょうけど素直に着替えるのをオススメします。
ボディスーツを普段から着ているかたは、撮ることが分かっているのなら、その日は外して来て下さい。
撮影するだけなのに面倒臭さ倍増ですので(p_q*)
その他、腰のサポーター、湿布、エレキバンなども外せる物は必ず外しましょう!
撮影について
仰臥位撮影の場合は、靴を脱いでから撮影台の上に寝て仰向けになります。
手は身体の横ピッタリではなくて、5~10cmほど離れた位置に置いて下さい。
胸部だと「息を吸ってー止めて下さい!」というお馴染みの合図ですけど、腹部の場合は「息を吸って~吐いてー止めて下さい!」となりますので初めて撮る人は驚かないで下さい。
胸部で息を吸って撮る理由は、ターゲット部位である肺に空気をたくさん入れることで、観察範囲も広がりますし、呼吸による体動の影響も少なくなるからです。
腹部だと肺のような臓器はないので、吸ったときに撮る意味はありません。
呼吸による影響を抑える、そして写真の再現性を理由に、毎回吸って吐いて止めてから撮ります。
撮影時間はなんと胸部の2倍~多いときには数十倍もかかりますけど、0.02秒が0.1秒とかになるぐらいなので、感覚的には結局同じです。
ピッ!っていう撮影音は時間に比例しているので、ピッ!からピィッ!ぐらいの変化ですね。
もしピッ!が聞こえるレントゲン室であれば、耳を澄ましてみてもいいかもしれません。
動かなければ、心の中で何を考えようが自由ですので。。。検査受けてるときって暇だし。
被曝量
各組織・臓器別の被曝量です。
部位 | 入射皮膚面 | 胃 | 肝臓 | 結腸 | 骨髄 | 生殖腺(男) | 生殖腺(女) |
被曝線量[mGy] | 1.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.1 | 0 | 0.1~0.2 |
被曝線量は非常に少なく、白血病や癌になることはまずありません。
腹部ということで不妊を心配される人もいるかと思いますが、生殖腺への被曝もほぼ0ですので問題にはなりません。
男性の場合、生殖腺というのは精巣で撮影範囲には含まれず0ということになります。
散乱線(体に当たって散らばる放射線)があるので、厳密にいうと0.001ぐらいは被曝していますがこれは問題にはなりません。
外来受診したら腹部レントゲンを撮ることになった!ときは必ず医師に妊娠していることを言いましょう
胎児への影響を考えたとしても、流産・障害発生などの影響が出るのは100mGy以上なので、問題はありませんが、不安な気持ちを抱えたまま、撮ってしまうと精神的なダメージを負います。
妊娠中にレントゲンを撮らない理由は、妊婦さんの精神的な面を考えてのことが多いです。
もう1つ追記ですけど、いわゆるお腹がポッコリ、メタボ体型の人は被曝が増えます。
詳細はこちらの記事で。数倍になっても影響はありませんので心配する必要はありませんが。
腹部レントゲン撮影まとめ
若い人ではあまり撮る機会もないですけど、歳を重ねると出くわすことになる腹部レントゲン。
痛みも無いし、簡単な検査なので何にも考える必要はありませんが、唯一注意しなければならないのは妊婦さんですね。
医師が妊娠していることを知らずに、レントゲンのオーダーを出されたときには必ず告げましょう。
不安なまま検査を受けることはメンタル的によくありませんのでね!